この個体は当初フロントのPUロケーションをトリプル・Jのフロント位置に設定しました。しかし依頼者Mさんご本人のイメージでは通常のJJのフロント位置で行くべきだと判断し直して製作しました。
また、これは多くのベーシストに言える事なんですが、ジャズベースをメインで弾かれている方の多くはプレベのサウンドを認めつつも、音の立ち方、有り様って言いますか、輪郭がハッキリしないサウンドとして捉えている傾向が強いんですね。
これに関してはデジタル音源を耳にして育った年代のプレイヤーが増えるにつれ、その傾向は増加している様にワタクシは感じています。
やっぱアナログ音源っていいよな!って言ってる若い世代のプレイヤーであって、プレベがメインベースの方にしても、モータウン・サウンドの様な太くウオームなトーンではなく、よりブライトなトーンで音作りしている傾向が強いですものね。
これはいい悪いの問題ではなくて、生まれ育って聴いて来たある種の環境の違いですから、あって当然だと思いますしね。
そ うしたプレイヤーに接していますと、同じJJ設定のベースであってもtmpの楽器は従来の楽器を上回る本体鳴りから通常のJBを明らかに上回る厚いローレ ンジを備えておりますので、通常のJBの様にフロントと平行ロケーションでリヤーPUを設定した場合、ローエンドからハイエンドまでのバランスが聞き慣れ たJBサウンドとは異なったバランスで聴こえている筈なんですね。よりローよりのサウンドとして。
そこでtmpのJJ設定ではリヤーPUをスラント設定に変えてハイエンド域に広げたバランスで拾わせてJBサウンドでありながらも重厚さを備えたローエンドとバランスする高域を確保させています。
ですからワタクシに「純粋に60'sのJBサウンドで鳴りの素晴らしい楽器が欲しいんです」とオーダー下さった場合には勿論通常の平行ロケーションでのJJ設定で楽器を作ります。
で すが、tmpベースの基本設定では先にお話しした様に同じJJ設定であっても、より重厚であり、よりブライトでもあるんです。薄い音でレンジだけは広いの はアンサンブルで存在感も無く抜けませんから最悪ですが、腰が強く痩せていないサウンドが楽器本体に確保されていれば、tmpのJJ設定はレンジの広さ、 としてメリットが生きて来ます。
もし仮に、オールドタイムのベースサウンドが欲しければ簡単です。EQの70hz以下をゼロではなくてマイナス dBにして完全にローエンド域をカットしてしまえばいいんです。そして同じ様にハイエンドも16k以上をカットしてしまえば再現出来ます。あくまでゼロ dBじゃなくて、カットオフです。
これは音楽再生でも確認出来ますよ。ステレオにEQかまして同じ様に上下をカットオフすれば、よりミッドレンジが明確に聴こえて来ますからね。特に80’s以前の音楽を聴くのに適しています。
これは昔のサウンドはリスナーの多くがラジオで音楽を楽しんでいたので、レンジが現代の様に広く無く狭い帯域でしか機材再生能力が無い環境でした。その為にそれに対応したソースミキシングが行なわれていたからです。主要レンジだけを聴かせると言う事がポイント。
そもそも昔のラジオで重低音再生なんて無理。歪むだけで聴けたもんじゃ無かったんですからね。
それからEQ処理の極意も「基本はノンブースト、いかに余分な帯域をカットするか」です。
ブーストすると言う事は実際には実音を薄くさせると言う事でもありますからね。ここを勘違いされてる方が多い様に思います。
いとも簡単に何ヘルツを何dBブースとして、って言いますが、これは例えば1リットルの牛乳を1.2リットルに増量させる作業とは違うのです。1リットルの牛乳を水で薄めて1.2リットルに水増ししてる訳です。ですから牛乳の味は薄まっている、それと同じなんです。
ベー スではアクティブ・サーキット仕様の楽器も多いのですが、12dBブースト可能!なんてカタログデータで言ってますが、本体がパッシブでもしっかりした骨 太なサウンドさえ出せれば、アクティブ化の必要性も少ないはずですから本来ブーストはせいぜい3~4dB出来れば充分なはずです。
そもそもコントロールパネル内のサーキット基盤上で9Vバッテリーを使って音を作るのは「実音で勝負出来ないんで電池で音作ってますからサウンドの実音はうっすいですよ~」って言ってるようなもんです。