最近あらたにtmpを知った方々から「どうしてセットネック物はCF化出来ないんですか?」と質問を頂きます。またセットネック物の指板をCF仕様のものに変更できませんか?と言う内容のモノも頂いておりますので、ここで一度説明を致しておきます。
そもそもワタクシが考案したサークル・フレッティングは定点を中心として各フレッティング・ピッチで円弧状にフレット溝加工されたものです。またこの指板への溝加工は現在ではNCルーターと呼ばれる数値入力で稼働できる木工及び金属樹脂加工マシン(参考写真)に0.6ミリほどの細い溝加工用の刃物を取り付けて、ひとつひとつ円弧Rが異なり、更に指板上面のRも異なる3次元加工を施すことでCF指板製作が可能になっております。
注:現在は国内パテントをF社さんに譲渡致しましたのでワタクシは考案者であっても勝手にCF指板の製作は行えません。USAパテントは未だにワタクシがパテントホルダーです。
当初は製造提携を結んだF社さんへワタクシが算出した各モデル毎の1フレットから最終フレットまでの円弧R数値に基づいてF社さん社内に設けられたNCルーターにプログラミング入力されて製造がスタートしました。基本的にはマシンの加工テーブル上に設置された指板にマシンで溝切り加工を施し、そのCF指板が張られた楽器がCF仕様となってるワケです。
ですから同じようにデタッチャブル方式のネックは取り外しが可能ですから、元のノーマル・フレッティングの指板溝を指板材と同種材で一旦埋木してフレットレス状態にしてからマシンテーブル上にセットし、マシンの刃物の高さ位置設定を変えて指板単体時と同じようにCF溝加工を行っています。
しかしセットネックの楽器はネックが取り外しが出来ませんし、更にネックに仕込み角がそれぞれ違った形で付いていますからその単体毎に治具を作製しない限り、マシン加工が出来ないのです。
ですから厳密には不可能ではないのですが、持ち込まれたセットネックの楽器毎に異なる設定に合わせてマシンへの取り付けが必要となり、その都度手が掛かりますから手間暇が大変なんです。
ちなみにこの手のNCルーターのプログラミング代金だけでも10~20万は当たり前ですから、その都度の設定変更作業はとんでもなく高額な工賃に結果的になってしまうのです。
また、セットネックギター及びベースの指板交換も実は大変な作業なんです。簡単に言えば、まず指板はニカワ接着以外では指剥がすこと自体非常に困難ですから指板上面を水平にして大型の円盤ノコギリで指板だけを削り飛ばしてから(実際には数パターン方法があります)上面を元の接着剤が残らないように水平精度を出しながら落とさなくてはいけないのですが、その際ネック本体を削ることは避けなければいけませんから精度を出しながらの作業は非常に難しくなります。
なぜなら元の接着面が残っている場合、新たに接着するCF指板は接着剤の上に更に接着剤が付いた形でセットされますから最終的にネック材と指板材の接着ではなくて接着剤同士の接着になりますから微妙な弦振動ニュアンスは無視されネックとしての一体となった響き方が出来なくなる上に接着剤の層はトラスロッド調整時のネックの湾曲に対して素直に準じてくれないために指板の剥がれやネック自体のねじれや波うちの原因にもなります。接着層が厚ければ厚ほど音質面でも精度面でもマイナス要因が増えます。
またこうした指板交換作業はコスト面でも新たに楽器を購入できるほどの工賃となります。
単純に考えてもまず指板を剥がす工賃、新たなCF指板代金、インレイ・ポジションマーカー・セルバインディングなどの加工代金、更には元通りの塗装を施す塗装代金、そして最後にフレットを打ち込んで、それを仕上げてナット溝切り加工して、や~っと仕上げですから代金は高額です。
まあ、ざっと見積もっても最低でも15万、多くの場合20万以上の工賃となります。
ね?セットネックの指板交換て大変なんだとお分かり頂けましたか?ですから不可能ってことではないんです。やったら高額な作業代金が掛かると言うことです。
まあ、一番いいのは皆さんがお気に入りのメーカーさんに働きかけて○○モデルのCF仕様のモデルを生産してください!って声が沢山届けばメーカーさんも重~~い腰を上げて生産に乗り出すかも知れませんよ。(^_^) でも、どーでしょうねえ。とんでもなく腰重いっすよ!(^o^) 08年3月記