CCRにはテレキャスターのプレスプレート・ブリッジから切り出して製作するtmpならではのプレート・ブリッジを採用しています。一番上の写真は数あるテレキャスター・ブリッジ達の同窓会みたいなショット。
全て同じに見えるテレキャスター・ブリッジですが、この4つは全て素材特性が異なっているのです。
tmpでは同じCCRを製作するのにも完成時に与えたいサウンドにフィックスさせる為に特性の異なるプレートを随時ストックしているんです。簡単に言えば各社の使用している素材の鉄板の純鉄やニッケルなどの混合比によって同じ鉄板でも硬さが異なり、またコンマ数ミリと言ってもプレート厚が異なることから響き方にそれぞれ違いがあるんです。ですから同じフェンダー社製でも昔の製品と最近の特にローコスト製品のパーツなどは形は一緒でも素材特性が異なるために同じ音はしないのです。
例えば、一番硬質な素材で厚手のプレートは80年代にしか製作されなかったユーズドのブリッジを入手して加工していきます。これらを仮にtmp仕様として業者に特注製作(混合比、厚さ指定、サイズ型起こし)した場合、数百万の製造コストが掛かってしまうのです。
tmpでは、と言っても「ワタクシと言う技術屋」が考えるところの「楽器のカスタム製作」とは、既存のパーツをそのまま採用するだけではなく、必要であれば存在し無いパーツはそれを自作することを当然のこととして作業に組み入れて製作することです。先日もストラトのシンクロ・トレモロの6本のスクリューも既存のサイズや形状精度では不満なので特注製作致しましたし、現在はハンバッカー・ピックアップ用のアジャスタブル・ポールピースを素材特性を指定した上で特注形状で発注しています。これらは全て最終的な楽器のクオリティを達成するために必要なエレメントを揃える作業なんです。
写真:#-2は必要なサイズにブリッジ・プレートを切断しているショット。そして#-3の写真はそうして製作し終えたプレート(真ん中)と採用するウィルキンソン製の首振り構造のブラス・サドル、そして左は元々のプレートが切断された残りの部分です。
CCR用のブリッジはおよそプレート長が36ミリ~30ミリの間で設定します。この長さは同じCCRと言うモデルであっても最終的に与えたいサウンド・キャラクターを目指して、その都度異なるボディ素材の単体特性を吟味し設定キャラクターに合わせて最初に紹介した4つのブリッジ・プレートを選択し、更にボディとの接面積を30~36ミリのどのサイズで設定するかなどを決定して都度製作しているのです。
サイズによる明らかなサウンド変化は3ミリ毎に変化しますので、30~36ミリの間で3パターンの音質変化が得られることになりますが、実際には1ミリ単位で設定加工致しています。
先日ブログでご紹介したtmp独自のクライオ・フラットケーブルも同じように単に配線材を選ぶ程度ではなく、その都度製作して最適かつ最良な配線材を製作者自らが生み出すことから行っています。
今回のブリッジもオーダー下さった方の楽器素材特性を踏まえた上でプレート素材を選び、最適な接地サイズに切り出し、接地面も平面精度を高め、また加工断面にもサビ止めのコーティングを施して作り出した一品製作品なので結果的に製作する楽器に応じてブリッジに於けるサウンド特性は毎回異なっているのです。
プレートとボディトップがどのサイズ/接地面積でサウンドはどうなるのか、素材の特性がどうサウンドに影響するのか、それらの検証は20年以上前に設立した個人工房「女神工房」から始まり、今日まであらゆる試作体験をした結果がワタクシのカラダに染み込んでいます。そのカラダが判断して決定しているのです。
ちまたにカスタムショップ製品が出回っておりますが、それらは所詮既存のパーツをマウントしているに過ぎませんが真のカスタム製作とは一品製作に限りなく近いスペック内容であるべき、とtmpではそう考えております。 でも・・作るのめんどくさいなあ~(^o^) 06-6/25 記